ベルギーでの生活で変化した点は今まで以上に料理にこだわった事である。もちろんデザートを軸にしての料理だ。常に親父の料理を眺めているのだから料理に興味を持つのは当然である。それとフランス時代に比べて収入が増えた事と料理人の友人が増えた事が理由であろう。欧州生活を通しての趣味の一つ「旅」も食を中心に組み立てる様になった。
スイス |
友人の勧めでデュッセルドルフ(ドイツ)の三ツ星へ食べに行く事になった。ドイツ料理は大味で美味しくないという声も聞くが、私は以前にも何度も書いたがドイツ料理が大好きである。そのドイツの数少ない三ツ星への訪問である。フランス料理では無く生粋のドイツ料理で星を取っていて欲しい期待で胸が膨らむ。この三ツ星で大失敗をしてしまった。私達が日本人だと知るとメイトルが俄然張り切り一番高いコースを薦めてきた。折角だからと内容を良く聞かず頼んでしまったのが失敗である。シェフが日本に凝っているらしく、前菜には何と太巻き!そしてメインの肉料理は神戸牛のポン酢おろしソース!!。決してボラれた訳でも料理がまずいと言う訳ではないが、わざわざドイツの三ツ星まで来て太巻きにポン酢おろしは無いであろう。メイトルもメイトルである。以前ウィーンにいた時の事。休憩時間にマダムが血相を変えて走って来てすぐに部屋に来るようにと言う。何事かと思い急いで部屋に行くとテレビがついていた。「たまたま日本の番組がやっている」と急いで呼びに来てくれた次第である。私は一時間もの間、NHKの盆栽講座を見る歯目になった。それもニコニコと。尤もニコニコしていたのは私の不甲斐なさか優しさかは意見の分かれるところであるが、今回は趣旨が違うので省略する。太巻きといえばスイスに住んでいた頃、チューリッヒで日本フェアが行われた時の事。チューリッヒで最も格式の高いデパートのショーケースに立派な掛け軸と書が。その書の内容が「のりまき」!。何故「のりまき」だったのかは10年以上たった現在でも不明である。もう一つ!ショーケースに立派な凧が飾ってある。なるほど間違いの無い立派な凧である。その説明書きに唖然!「日本で風の力を用いて空高く上げる玩具。タコと呼ぶが地方によってはイカとも呼ばれる。」ええ~!「それは違うだろう!」と長い間、馬鹿にしてきたが最近になって反省しました。九州の一部で「イカ」と呼ばれる事があるそうです。
ブルージュにて |
話は逸れに逸れたがベルギーは「グルメの国」又は「世界一レストランの多い国」と言われる事がある。自分で調べた訳では無いが人口に対してレストラン数が一番多いらしい。同じく美食の国フランスと比べると見劣りするかもしれないがコストパフォーマンスで言えば確かに上であろう。パリの一つ星の値段でベルギーでは三ツ星レストランで堪能できる。ベルギーには三ツ星は三件(当時)。最も早く三ツ星を所得したコム・シェ・ソワ。そして14年間三つ星を維持しているブリュノウ。そして最近、三ツ星を獲得したカルメリット(現在も三ツ星はカルメリットだけ)。老舗のコム・シェ・ソワ。新進気鋭のカルメリット。その中間で安定しているのがブリュノウと言ったところである。二店はブリュセルにあるがカルメリットだけがブルージュにある。ブリュセルから列車で約1時間のところにあるブルージュはベルギーで一番のお気に入りの町であった。中世の景観がそのまま残る美しい街だけなら他にもあるがブルージュは中世の街並みにプラスして運河の美しさが最高なのである。もともとブルージュとは"橋"という意味で旧市街には小さな橋がいくつもかかりその美しさを増幅させている。カルメリットも良かったが、運河沿いにあるビストロでデザートに出てきた焼きリンゴは今もはっきりと覚えている。蜂蜜をかけて焼いただけの素朴なそのデザートの美味しさは衝撃的であった。
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