先日、炊き出しに茨城県に行ってまいりました。茨城県のその体育館には主に福島県の原子力発電所の事故による避難の方々をはじめ約400名の方が避難されています。
阪神大震災の時、私は東灘区という最も被害の大きかった場所の一つに住んでおりました。幸い怪我は無く、地震の直後すぐに家を飛び出し当時アシスタントシェフをしていたホテルのスタッフの家を回り安否を確認しながら既に早番が出勤しているホテルへと向かいました。その後二日間はホテルの裏にある病院の入院患者さんのためにパンを焼き続けました。病院に食糧が届くようになってからはホテルを出て給水車の手配をしたり避難所の方々お世話をしたりと活動しました。こう書くと最初から冷静に行動した様に思えますが我に返ったのはホテルに着いてパンを焼き始めてからです。一番大切な震災後2~3時間の行動についてはその後随分自分で自分の事を攻めた時期もありました。当時の私の行動は後から思えば至らぬ事だらけでありました。瓦礫の山の中に立ちながら事の重大さにピンときていなかったというか、今自分が置かれている立場が現実のものとして捉えきれなかったのです。そのとき万が一、又いつかこのような状況に置かれる様な事があれば「絶対に阪神の教訓を生かしてリベンジする!」と思っていました。 炊き出しの話を最初、イタリアンの山田宏巳さんから頂いた時「行く!」と即決しました。しかしそれはパスタかスープか分かりませんが料理のお手伝いを喜んでさせて頂こうというものでした。ところが宏巳さんからは 「トシちゃんはスイーツをやってくれなきゃ。100人位子供達がいるから。絶対喜んで貰えるよ。もちろん大人もね」との事。その避難所にはおにぎりやパンなど食糧はあるが体育館の為、火が使えず毎日冷たものしか食べていないらしいので絶対、温かいラーメンやパスタは喜ばれるだろう。しかしスイーツはどうなんだろう?「こんな時にケーキ?」と逆に引かれてしまうのではないだろうか?。大分迷いましたが宏巳さんの強い勧めもありデザートサービスを決断しました。いざ当日「どうせやるのなら子供達と一緒になってやろう!と館内放送で募集したところ一時間も前から希望者が並んでいるとの事。これは期待出来るかも知れない。 「避難している人達全員の分を今ここにいる皆で作るんだから責任重大だよ」と言うと集まった子供達は「えー!」と言いながらも何処か誇らしげで嬉しそう。子供達と一緒になって焼き菓子を皿に盛り生クリームを絞ってフルーツで飾り付けをしました。最初をおっかなびっくりだった子供達もとても楽しそう。
無事作り終わりいよいよ食事タイム。「子供達と一緒に作ったデザートですよ!」と大声を張り上げると皆、片手にラーメンやパスタを持ちながら嬉しそうにデザートもしっかりとお礼を言いながら持って行って下さいました。中には私の手をしっかりと握りしめて 「さっき孫がケーキを持ってきてくれました。こんな時の誕生日にケーキで祝ってもらえるなんて思ってもみませんでした。私は本当に幸せものです。本当にありがとうございました。」こちらまで目頭が熱くなりました。本当に炊き出しに来て、そして菓子職人になって良かったです。
山田宏巳さん全員のまとめ役ありがとうございました。田中敬一さんやすずきBさん、裏方のお仕事本当にありがとうございました。海味の長野親方、前日徹夜で400人分の寿司の仕込みを終えて疲れがピークのはずなのに元気一杯で皆さんに寿司を握る姿、感服致しました。ありがとうございます。賛否両論笠原さん、GENEI入江さんはじめ料理人の皆様どんな環境下でもばっちり味をまとめてくるプロ根性、勉強なりました。 そして避難されていらっしゃる皆様!。こんな事を書くと不謹慎かも知れませんが逆に一杯の元気を頂きましたありがとうございます。大変だと思いますが登らない太陽はありません。皆さんも私達も国民が一体となって分かちあい復興に向かって頑張っていきましょう! |