一夜城Yoroizuka Farmの農園は今、四段に分かれています。元々はこのうちの真ん中二段を農地として耕す事になっておりましたが急遽地主さんのご厚意により最上段と最下段も借りられる事になり人も入れないような荒地だった最上段はユンボ(小型ショベルカー)を入れて整地して蜂蜜用のクローバー畑に。ところが最下段は急斜面なのでユンボを入れる事も出来ない為、オープンまでには手が回らず取りあえず木を伐採して雑草を取り除き遊歩道を付けただけの状態にしていました。昨春にチェンソーで木を切って開墾した時の事です。 「鎧塚さん、その木は蜜柑だからひょっとした冬に実をつけるかも知れないから残しておきましょう」と地元の農家の方にアドバイス頂き十数本の木をそのまま残しておきました。ずっとほったらかしにしてあった蜜柑の木ですからあまり期待していなかったのですが昨秋ごろから実をたわわにつけ始めました。「どうせずっと放ったらかしの木、対して美味しくないだろう」などと馬鹿にしていましたが何とこれが最高に美味しいのです!。そのまま食べると少し酸味が強いのですがこれがジャムなどにしてスイーツにするととてもとても相性が良いのです。
春は植樹したり肥料をあげたり、夏は雑草刈りという大事な仕事があるのですが冬はそれほど農作業が無いので小田原に来るとまずごみ袋をもって農園を隈なく掃除しながら農園中の蜜柑を試食するのが日課となりました。樹齢は15年から20年位と想像されますが一本一本、日の当たり方も違いますし実の育ち方、味ももちろん違います。そしていよいよ昨年末から収穫を始めました。先々はスタッフ教育の一環としても皆でと考えていますが今年は手が空いた時にスタッフも手伝いに来てくれますが何とか時間をやりくりしてほとんど自分でやっております。今はこの「シェフ手摘み完全無農薬放ったらかし農法(笑)」の一夜城蜜柑は主に一夜城ロールの生地やジャムに使ったり、その他コンフィテュール、全てのパンの天然酵母に使ったりしていますが近々に「一夜城蜜柑アイス」としても販売予定です。
私は子供がいませんが畑をやるという事は子育て(スタッフ育成)と同じなのではないかと思いつつあります。ひょっとしたらこの蜜柑が何処か地方から持ち込まれた食材サンプルならば使わなかったかも知れませんし、品評会に出せば一笑に付すような蜜柑かもしれません。しかし自分で育て収穫した愛着のある作物はもちろん短所もありますが必ず長所もありその長所をどうやってスイーツに転化して花開かせてあげられるのかを必死で考え、また必ずその道が見つかると思っています。
ちなみに最下段にはやはり放ったらかしの大根も一杯生えております。どれくらいの間、放ったらかされていたのかは不明ですが、地上に出ている葉っぱはそれはそれは立派なものです。そこで引き抜いてみるとなんと可愛らしい大根でしょう。まぁ、それを貧相と言う人がほとんどでしょうが(笑)。どうやらそちらの方は今のところ葉っぱしか使い道がなさそうですが・・・。 |