今年ももうすぐノエル(クリスマス)がやってきます。ノエルはパテシィエにとって一番忙しい日々であり、一番の腕の見せ所であり、一番楽しい日々でもあります。
ミッドタウン
クリスマスイルミネーション(1) |
普段はこれでも一応は社長でありますので菓子作りの他にも多くの仕事があります。経理や新商品の開発、スタッフ育成、マスコミ対応等々。ところがこの期間はそれらの事は全てストップして一日中菓子作りに没頭できる楽しい日々なのであります。ノエル前はアポを取り行くる様なあぽちんな業者もマスコミも皆無です。むしろ気持ち的に大変なのはノエル前でケーキの予約漏れはないか、包材やフルーツの発注漏れは無いか、サンタさんやプレートなどパーツは揃っているか、冷蔵庫などの保管場所はしっかり確保出来ているのか、スタッフは足りているのか・・。など考えなければいけない事が山ほどあります。始まってしまえば後はわっしょい、わっしょい、ノリノリでやるしかないのでありますボスは(笑)。
毎年、前夜から朝まで徹夜でケーキを作り、準備が整うと暫しの仮眠。少しの仮眠をとった後、厨房に入り追加のケーキをひたすら作りながらも店頭にも立ち陣頭指揮を執とります。夜の閉店後、再び翌日のケーキを徹夜で作り始めます。これを21日から25日までハイテンションで駆け抜けます。鼻歌を歌いながら大声を出し続けケーキをどんどん仕上げていきます。大声で叱る事は多々ありますが、この期間絶対にくどくどとは叱りません。それは後の事で、この期間良い菓子を作り続けるには高いモチベーションを維持し続けなければいけません。失敗をしても反省はしなければいけませんが落ち込んでいる暇はありません。若い頃は二日間位は完全徹夜をしましたが今は絶対に完徹はしません。少しは眠らないと五日間は良い仕事ができません、さすがに40歳過ぎると(笑)。
ミッドタウン
クリスマスイルミネーション(2) |
パティシエになって一年目は長い長いノエルでした。この頃、関西のホテルでは12月1日からロビーに西洋の城などの大きな菓子のディスプレイを飾るのが習わしでした。その為10月位から毎日、通常の仕事の後、夜中までディスプレイを作り続ける日々でした。12月25日、全ての仕事が終わりまだ終電がある時間に何カ月ぶりかにホテルをでました。その時の町のネオンがなんと綺麗であった事か。一か月も前からノエルの装飾がされていた筈なのにそれらを見る余裕も時間も無かったのです。ノエル当日、多くの日本人には(もちろんノエルはキリスト教徒の方には聖なる日であり大切な日なのは重々承知しております)一つのフェスティバルに過ぎないかも知れませんがパティシエには違います。ネオンの美しさに感動し涙を流しながら25日に一番幸せを感じるのは絶対にパティシエだと感じました。大変であれば大変であるほど無事終わったという充実感と解放感からたったの数時間ですが心の底から楽しめるノエルがやってくるのです。
余談にはなりますが初めてのノエル、自分で作ったクリスマスケーキを自宅に持って帰りました。喜んだ祖母はそのケーキを先ずは仏壇に供えました。
「おばあちゃん、クリスマスケーキは仏壇に供えたらあかんのとちゃうか?」と聞くと
「え、なんでや?」と質問の意味も全く解っていないようでした。なんとか説明すると、
「キリストはんも仏様もそんなちっちゃいお人やあらへん、問題あらへん!」との事、もっともであります。
その祖母も今は仏壇の中に入って仏様と一緒になって私のクリスマスケーキを心待ちにしている事でしょう。 |