Rue Montorgueil
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Rue Montorgueil
パリ最古のPatisserie Stohrerは、以前はパリの胃袋と言われた市場Les Halles(レ・アール)の直ぐ隣、Rue Montorgueil(モントグイユ通り)の中程にある。元ポーランド国王の娘Marie LESZCZYNSKA(マリー・レクチンスカ)がルイ15世に嫁いでくる際、一人のパティシエを同伴した。そのパティシエの名がNicols Stohrer(ニコラス・ストレー)。当時Dessertは宮廷の中で貴族達だけに振舞われていた。それを一般民衆にも食べてもらいたいと彼は宮廷を去り、1730年この場所でParis最初のPatisserieを開店した。それから約270年間この場所でパリジャンやパリジェンヌに愛され続けてきた。

Marche-市場

もっともStohrerの人気は変わらなくとも、Les Halles付近は随分と変貌した。中央市場は郊外のランジスに移りLes Hallesはショッピングモールとなった。とはいえRue Montorgueilは今でも昔の面影を残しており、この通りにあるフロマージェリー(チーズ屋)、ブーランジャリー(パン屋)、ポワソニエール(魚屋)、ブッシェリー(肉屋)、マルシェ・ド・ヴァン(ワイン屋)、ビストロ等々、最高に御機嫌な通りである。毎日この通りを歩くだけで楽しく、買い物にいつもわくわく心を躍らせた。この通りでの買い物はいつも会話で溢れていた。チーズや野菜、フルーツ等買うときはいつも「いつ食べるの?」と問われた。それにあわせて熟成度合いなどからアドバイスしてくれるのである。ワイン店もこちらの懐具合や好み、食事の種類等から親切に選んでくれた。話好きのバンドゥーズ(販売員)は話が止まらなくなりこちらが戸惑ってしまう事さえ多々あった。パン屋でバゲットを買うと思わず端っこを齧ってしまうので皆、端っこが欠けたバゲットを持ち歩いている風景は微笑ましく大好きであった。子供の頃からの犬好きの私はこの通りのワンコ達ともすぐ仲良しとなった。斜め前のビストロのチャウチャウ“チャウチャウチャイマスネン”(チャウチャウのようだが何か違う・・)、肉屋のシェパード“ブッチュ”等々。但し名前は私が勝手に付けたもので本名ではない。

TOSHIスペシャリテ BABA

この愛すべきマルシェにあるPatisserieの270年前からの人気メニューはこの店のスペシャリティーとなり毎日飛ぶように売れていく。ピュイダムールやババである。「愛の泉」とロマンチックな名前をもつピュイダムールはパイを円柱状に焼き、中にCreme patissiere(カスタードクリーム)を山盛りに絞り、上に砂糖を何回も振りかけその都度、焼きごてでキャラメリゼしていく。とてもシンプルだがパイのサクサク感とクリームのまろやかさ、キャラメルの食感とほろ苦さがマッチした絶妙の一品である。TOSHIのオープンでは店頭を飾っていた。ババはブリオッシュのような生地をプリンカップでキノコ状に焼きこみそれをラム酒がしっかり効いた熱いシロップのなかに入れ2時間ほど寝かせる。シロップを切ってアンゼリカを飾って出来上がりである。これに生クリームをトッピングしたものもあり、これを更に進化させたものがTOSHIの人気商品「Baba」である。生地にセミドライのいちじくを加えプチプチした食感と味に奥深さをプラスし、これをセルクルで円筒状にしっかりと焼き込む。荒熱がとれれば人肌のラム酒入りシロップに一晩じっくりと漬け込み、翌朝静かに余分なシロップを切る。きめが細かくしっかり焼きこんだ生地にゆっくりとシロップを染みこませる為、より一層しっとりとジューシーな生地に仕上がる。これの中心部をくり貫きCreme patissiereを絞り込み、最後に生クリームといちじく、金箔で飾る。もちろんStohereのババも素晴らしいが自分なりにアレンジした、この「Baba」はToshi Yoroizukaのスペシャリティーのひとつである。

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