TOSHIとしてスイスに生まれ
015/071
3連休
パン部門に移って最初は計量と成型係だったが、慣れてくると分割・仕込みそして最後にはオーブン担当まで任せてもらえるようにまでなった。前回紹介したパンの他に、スイスでは地名の名前のついたパンが多くあった。ZurcherbrotやSt.Gallerbrot等。またZopfという編みパンがある。3本位の編みパンは日本でも経験があった。三つ編みというやつで、女性の方ならパン職人でなくても経験はあるだろう。ところがスイスでは8本位まで編み込んでいく。
やり方は、残念ながら私の文章力では到底説明できない。Brezelという塩味のパンはドイツでもビールのつまみとして食べられ有名である。面白いパンでは8月1日建国記念日のスイスの国旗を模じったパンや蚊の形をしたパン、12月には人形を模じったとても可愛いパンもあった。コンディトライ(ケーキ)の方では、EngadinerNusstorte(胡桃と蜂蜜のトルテ)やSchwarzwaldertorte(チェリーのケーキ)等が美味しかった。日本と大きく違う点にスイスでは揚げ菓子が多く人気があった。Berlinerというフランボワーズジャムの入ったドーナッツや、Schenkeliという長細い揚げ菓子。Fasnachtskuechliという薄っぺらい大きな「いかせん」の様な形の揚げ菓子は、スイスの代表的なお祭りの時に食べられた。Fasnachtsとは謝肉祭の事で宗教的な行事だが、簡単に言うと仮装行列だ。老若男女、チームで仮装して楽器を演奏しながら練り歩く。子供からお年寄りまで大騒ぎしているのが心和む。行われる日は場所によってずらしてあり、「今日はあの町のFasnachtsだ!」という掛け声で仕事を早く終わらせ集合して仲間と共に繰り出していく。チューリッヒ等の大きな町の祭りもいいが、田舎の小さな村の祭りもそれはそれで最高に楽しい。
エルマティンガーでは夏の一ヶ月のバカンスと冬の休みの他に、二ヶ月に一度3連休がもらえた。「ヨーロッパでは給料が貰えないかも」と覚悟して日本で貯金をして渡欧した訳だが、労働ビザを所得できたお陰で一人前の給料をもらう事ができた。ヨーロッパでの貯蓄はお金ではなく経験である。この休みを利用して旅をした。とにかく観て飲んで、食った。最初の3連休はステファンとイタリアに行った。今までもバックパッカーとしてイタリアを回った事があったが、今回はジェノバへ飛んでそこから車を借りてピサやあの辺りの海岸をブラブラ回った。理由はステファンの好きな機種の飛行機がジェノバに飛んでいる。それだけだった。ステファンの趣味は旅。というよりも飛行機マニアなのだ。ところが直前になってエンジントラブルから飛行機の機種が変わった。航空会社からすればトラブルはあったが機種を変えて、定時に出発するのだからなんの問題もないはずなのだがステファンにとっては大有りだ。この旅の目的は彼にとって飛行機なのだから。落ち込んではいたが、おおらかな彼はイタリアに着くと上機嫌。私の今回の目的は、観光地でも何でもない普通の町の普通のレストランと菓子屋である。それにはステファンは最適である。彼がしっかりと話せるのは英語とドイツ語だが、フランス語、イタリア語、スペイン語、オランダ語、ハンガリー語も理解できるし片言だが話せる。スイスでは公用語が四カ国のせいだろうか、そういった人が多くいる。
期待通りイタリアの田舎町は素朴で何もなく、そして色んな物があった。場末のピザ屋など日本のピザとは比べものにならない位に安く、質素で素朴で…。でも美味かった。
期待通りイタリアの田舎町は素朴で何もなく、そして色んな物があった。場末のピザ屋など日本のピザとは比べものにならない位に安く、質素で素朴で…。でも美味かった。