パリへ
029/071
パリへ
パリについた余韻に浸る間もなく列車を乗り換えベルサイユに向かった。そうベルサイユ宮殿で有名な街である。パリから送られてきたホームスティの住所がこの街だった。ベルサイユ・リヴ・ゴーシュ駅に着いて案内所で地図を貰うと早速ホームスティ先に向かった。

Jean lue Peleのプティガトー

両手、背中に持てるだけの荷物を背負いやどかり状態で歩き始めると、ほどなく一軒のPatisserieの前を通りかかった。
店の名は「Jean lue Pele」(移転して現在はない)。長い間フランス菓子に御無沙汰している。お手並み拝見とば かりにショーケースを覗いた瞬間全身に電流が走った「すげえ!」。豪華で繊細、尚且つ洗練されている。普段なら迷わず飛び込むところだが、なにぶんやどかり状態である。「やっぱりフランスは凄いぞ!暫く遠ざかっている間にかなり進歩している。」たまたま出会った最初の店でさえこのレベルである。パリの有名店は今どんな事になっているのか?とにかくホームスティ先へ急ぐことにしたが道中、頭の中は不安と期待で一杯である。ちなみにフランスで最初に出会ったこの店がこの後何百と出会う菓子店の中で自分にとってデザイン的にはNo1であった。なんの運命の悪戯か最初にNo1の店に出くわしてしまった。

Jean lue Peleのアントルメ

この日の荷物はとにかく重かった。特に重いのが大理石や銅鍋、シリコンの型等飴細工の器具である。フランスではコンクールに挑戦するつもりだったので全部持っての移動である。それにしても遠い。やどかり状態でノロノロ歩いているとはいえ駅から50分位は優に歩いている。ようやく目的の住所に辿り着き部屋を訪ねると、見るからに朗らかな明るいフランス人女性が迎えてくれた。マダム・ベアールである。これから二ヶ月間一緒に暮らす事になるマダムである。娘としばしば訪ねてくる彼氏ともう一人フィリピンから来ている留学生と私とで5人暮らしとなった。このマダム・ベアール、イタリア系フランス人でとにかく明るい。
自分でも「人生、陽気に生きる事が一番!」と豪語する根っからのラテン系民族である。ムッシュは彼女とは正反対で温和で物静かタイプであった。最初は御主人だと思ったが彼氏らしい。詳しい事は分からないが誰も詳しい事など興味なさそうであった。二十歳の娘にもやはりイタリア系フランス人の彼氏がいてこの二人も何かにつけ自由奔放で今までの日本人と何か似たところのあったスイス人、オーストリア人とは違った印象を感じた。もちろん違うと言っても否定的な事では無くとにかく何か違うのである。スイス人は特に日本人と似ていると感じる事がよくあった。生真面目という点では日本人以上である。もちろん突き詰めていけば人間皆同じであるが、ドイツ、オーストリア、スイス、日本vsフランス、イタリア、スペイン、ポルトガル的な感がある。もともと陽気な自分だがこの一家にいると益々陽気になりラテンっぽくなる。到着して初日のディナーで早くも片言のフランス語ながらワインとフロマージュで大盛り上がりである。この家庭が大当たりであった。食事も美味しいし特にフロマージュとフルーツとワインは絶対に欠かさず、ディナーが終わると部屋用に毎晩ワインを一本持たせてくれた。そして私のフロマージュ好きはこの家庭から始まった。
翌日、早速パリへと向かいアリアランス・フランセーズに初登校。まずはクラスわけの為の試験を受け、めでたく初心者クラスに入学した(笑)。

Sponsor